事の起こりは、俺が冥夜や委員長達に手を出していたことが00ユニットである純夏にバレたことだった。

 

 だって、仕方ないじゃないか・・・・・・

 桜花作戦前に冥夜たちが俺に告白してきた。
 それで、記憶の関連付けがなされてしまい
 今までのループの記憶が全て蘇ってしまっては、ついつい我慢ができなかったのだ!

 お、俺は悪くないぞ! うん、たぶん・・・



「お、落ち着くんだ純夏・・・・  お、俺はただ みんなと幸せになりたかっただけなんだぁーーー!
  べ、別にお前を裏切ったわけじゃないぞ! お前とも 幸せになりたい!!
  この気持ちには変わりは無い・・・・・ あ、愛してる・・・愛してるぞぉ、純夏っ!!!」


 もちろんこんな薄っぺらい言葉で、純夏がまとう負のオーラを取り払うことなど出来るはずなく空気がドンドン重くなる。


   ゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴ・・ゴゴ・・・


「あ、新しいサンタうさぎで手を打とうじゃないかぁ! 今度はとびきりの奴を作ってやるよっ!!」

 お、俺は オリジナルハイヴに突入する前にKIAになる訳には行かない!!


   ゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴ・・ゴゴゴ・・・ゴゴ・・・


「す、純夏さん?・・・ 俺の話を聞いてくれよぉ〜!!・・・  たのむっ、もうこんなことは絶対しないからぁーーー!!!」

 ついには、土下座までする俺。
 土下座までできるのは男の甲斐性だろ! なんて意味不明なことを考えて純夏に頭を下げることにプライドを維持しようとした。

 だが、そんな俺に純夏は無反応だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・なぁ・・・もしかして許してくれた?」

 緊張に耐えられず、小声でそんなことを聞いてみた。





   ゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴゴ・・・ゴゴ・・・





 駄目でした、ハイ・・・・





「た〜〜〜〜け〜る〜ち〜ゃ〜ん〜の〜〜〜馬鹿ーーーーーー!!!」



「―― ペプシッーーーーーーーーーー!!!!!」


 そして、俺は星になった・・・・・









――――――――――――――――――――――――

マブラヴ イフ(W)

――――――――――――――――――――――――








 

 目を覚ませばそこは見慣れた元の世界の俺の部屋だった。


 星になることはあっても、死に至ることは無いと思っていたが俺の認識甘かったぜ・・・
 ずいぶん情けない理由でループしたもんだ。

   ガタガタ・・ガタガタガタ・・・

 ん? ・・・なんだ? 何やら1階が騒がしい。

「たけるちゃーん、大変だよ〜〜〜」
  ドアから入ってくるのは純夏ではないか!!

「お前っ、 なんでここにいの?」
 ありえない・・・ ループをしたなら純夏は今はシリンダーの中じゃないのか!?

「ヒドイよ〜〜 たけるちゃん・・・・  私は幼馴染だよっ、たけるちゃんの傍にいて当然だよぉーーー!」

  訳がわからない。
 ちょっと待てっ! 今まで体験したBETAの世界のことは、全て夢だったのか?


「それより早く、下に来て!  大変なことになってるんだよぉ!!」
  そう言って純夏は俺の腕を掴んで、部屋を飛び出した。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「――!!」

  一階に降りてみると、冥夜がいた・・・・
 それはいい。元の世界なら10月22日に冥夜がやってくるのだ、いわゆる絶対運命という奴だ。
 問題はその隣に ありえない人物がいた。
  なんで悠陽殿下が冥夜と一緒にいるんだ?


「タケル!会いたかったぞ!!」
  そう言って俺を見て叫ぶ冥夜。

「御剣の三つ子は家を分けるという悪習・・・ 私達の代で終わりにしましょう!!」
  悠陽殿下がそんなことを言う。

 そして、2人はソファから立ち上がり俺に抱きついてきた。


「たけるちゃん・・・・  貰い子だったんだね・・・・  そんななことを私にも黙ってるなんて、 ううっ〜信じられないよ〜〜」
「ち、ちょっと待て純夏!  そんなことは今俺も知ったぞっ!! 」

 純夏はそう言ってむくれているが、俺が三つ子って何のことだ?

「と、とにかく説明をお願いします。訳がわかりません」

 俺がそういうと、悠陽殿下が口を開く。
 殿下の話では、御剣家と白銀家は遠縁であり、俺は幼い時に忌み子という理由で白銀家に預けられたらしい・・・・


「さあ、タケル。一緒に御剣の家に帰ろうぞ!」
  そう言って俺の腕を取る冥夜。

「だめだよーー。たけるちゃんは渡さないんだから〜〜」
  もう一方の腕を掴む純夏。
  そんなやり取りが懐かしく、俺が見入っているとそこに悠陽殿下が割り込んでくる。

「純夏さん、あなたはタケル兄様とはどういった関係ですの? どうして邪魔をなさるのかしら・・・」

「わ、私は たけるちゃんとは・・・  と、とっても仲の良い幼馴染なんだからぁ〜〜、一緒に居るのが当たり前なのっ!!」

「もしかして、タケル兄様とは恋人なのでしょうか?  そうであれば、とてもお似合いですわ。
 ですけれども これは我が一族の問題。今しばらくは、少しご遠慮なさっては貰えないでしょうか?」

  そう言って悠陽殿下は純夏にプレッシャーをかける。

「私とたけるちゃんがこ、恋人!?あ、あわわわわわ・・・・・・」

  しかし当の純夏は別のことでうろたえている。真っ赤になって随分アタフタしているぞ。
  とにかく、冥夜だけならともかく悠陽殿下まで敵に回しては、純夏は防戦一方だった・・・・

 なんとなく純夏が可哀想になるが、おそらく俺では冥夜たちを止めることが出来ない。
 だから、どこか近くにいるだろうと思われる月詠さんに、冥夜たちを止めてもらおうと居間を見渡すと意外なものを見た。

「――え、えっ〜〜〜と・・・なんで!?」

 ドアの影からパジャマ姿の霞がジッと覗いているではないか!!
 小さな霞よりも大きなパジャマは男心をくすぐるように似合っている。

――か、霞・・・・お前もこっちの世界に来てたのか!?

 まったく、ずいぶん勝手の違う世界に迷いこんできたものだ。
 まだ外に出て確認はしてないが、とてもグロテスクな宇宙人と戦争をやってる世界とは思えないな・・・


 俺が呆れていると、霞はとことこ歩いてきて遠慮しつつも両脇にいる冥夜と純夏を避け、俺の腰に抱きついてきた。

「・・・・・タケル兄ぃは、渡しません・・・・」
「兄ぃって・・・霞は俺の妹なのか?」

 なんだその設定・・・と俺は心の中でツッコミを入れつつ返事をする。

「忘れたのですか?・・・・タケル兄ぃひどいです・・・・・」
「今日のたけるちゃん、変だよーー。霞ちゃんのことを忘れるなんて最低だよーー!!」

 泣きそうな顔をする霞
 ぷんぷん と怒る純夏。

 ・・・・えっ、俺が悪いの?
 でも、泣き出しそうな霞を見ていると罪悪感でいっぱいだ。すまん、霞っ・・・・


 とにかく純夏に説明を求める。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 どうやら霞は俺の親父とお袋の実子らしい・・・ つまりは俺の義妹か・・・

 つーか、俺の親父かお袋は、いつの間にかロシア系になってんのか?
 親がいきなりロシア人になってるとは、結構ブルーだな。
 クリスマスプレゼントに呪いの人形が入っているくらい嫌な感じだ。
 そんなことを思いながらも、俺は諦めに似た境地に至っていた・・・


―― はぁーーー、もう好きにしてくれ・・・・ 別の意味で少し狂った世界だけど、こういうのも悪くないかもしれない。
    霞もいることだしなぁ〜〜


 すると今度は、ドタドタと委員長、彩峰、たま、尊人が居間に入って来た。

 

―― おぃ、尊人。美琴じゃねーじゃねえかよ・・・・

 嬉しいような 悲しいような複雑な気持ちでいると、あいつらも可笑しなことを言いだす。

「ちょっと、タケル兄さん、朝から騒がしいわねぁ・・・・」 と委員長。
「・・・それには同意、たける達 うるさい」 と言う彩峰。
「あれ〜タケル・・・なんだか3年ぶりって感じだね〜」 ・・・・尊人。くっ・・・相変わらずだぜ・・・尊人。
「たける兄ちゃま、みなさん、喧嘩はよくないですぅ〜〜」 と最後に たま。

「・・・・・・・・・もしかして、お前らも俺の妹なわけ?」

 委員長達と純夏が部屋の隅に集まり、こそこそと囁きあう。

「・・・たしかに今日のタケル兄さん、おかしいわよ」
「・・・・性病?」
「あははは〜〜たける〜。僕が妹な訳ないじゃない〜、僕は男の子だよ」
「慧ちゃん、性病じゃあなくて記憶喪失だよぉ〜〜」

 聞けば委員長と彩峰は、親父の隠し子で、たまは お袋の連れ子だ。
 尊人はこの世界でも俺の親友ということだ。


 ここにきて、俺はなんとなくこのおかしな状況がわかってきた。

 いつ聞いたかよく覚えていないが、夕呼先生の話が思い出された。
 それによると因果導体で無くなった俺は『元の世界』に戻れるはずだった・・・・

 ただし、その世界はただの『元の世界』ではなく、純夏の意志が大きく介入した世界であるらしかった。


―― むむぅーーー、俺が手を出した女はことごとく妹にされてる・・・・これでは手が出せない・・・純夏、恐るべし・・・・





→ 後編に続く?

 

 

 

後書き


幸せってなんだろ〜〜と悩む。

みんなが幸せになる話ってのを考えると必ずつまずくのが、
幸せって何?という命題。
「嫌なことがない=幸せ」とか「相対する不幸があってこその幸福感」とか色々あるから難しい。


ハーレムものって好きなんだけど「God knows...」みたいな良作があるんで直球勝負はやめ。
とりあえず、最近読んだ「それいけ! 伊隅ヴァルキリーズ!」さんのノリが大好きで、つい書いてしまった。


それにしても書いた俺がいうのもなんだが
このタケルはサイテーですw